• 16 Oct 2008 /  プロデュース




    プロツールスで一番驚いたのは、
    切り貼りです。

    COPY& pasteとでもいうとわかりやすいでしょうか。

    すでに書かれた書類をコピーして、
    他の場所に貼り付ける。
    コンピュータに興味のある人なら、
    初歩的なテクニックですねよ。

    それがレコーディングの現場となると、
    かなりイメージが変ります。

    例えばさきほどレコーディングした
    ドラムの3小節目がよたっていた。

    同じフレーズの4小節目は
    ぴったり叩いていた。

    何とかして4小節目をコピーして
    3小節目に貼り付けたい。

    そう思うのは人情ですが、
    それまでのレコーディングの場面では、
    時間的にいいますと、80年代のはじめまでは、
    そんなことは不可能でした。

    もちろん、レコーディングしていると、
    そうした熱望にかられることは多々ありました。

    だって、3小節目はよたっているんだから。

    よたっているという表現が難しければ、
    上手に叩けていないということになります。
    そんなもの、レコードとして世に出すのは、
    担当プロデューサーの恥、って感じです。

    で、どうしていたかというと、
    24チャンネルのマルチトラックをもう一台調達して、
    (これにはかなりの金額がかかります。たぶん、1時間1万5千円とか。
    それでもドラマーを再度呼んでレコーディングするよりは、
    リーズナブルな価格となるのです)
    そこにドラムの4小節目をコピーして、
    (ドラムは最低10チャンネルは使います。
    BD、SNEA,TOM*2,HH*2,SYMBAL*2、
    それに、アンビエントとして2チャン。
    これで、10チャンネルくらいになりました。
    当然、それくらいかかるし、レコーディングの中で
    ドラムさえきちんと録れていれば、
    いい音に聞こえるものなのです)
    再度、それを4小節目にコピーしなおします。

    何て面倒なことをしていたんだ。
    今のテクノロジーで育った方は、
    そう言うでしょう。

    そういえば、こんなことも思い出しました。
    あれは、ジャニーズの仕事で、アレンジが萩田光雄さんでした。
    萩田さんといえば、山口百恵さんの「Play back partⅡ」とか、
    「横須賀ストーリー」とかを
    アレンジしていた方ですが、
    彼が、スタジオで、こう言ったのです。

    「最初のAセクションはいいんだけど、
    2コーラスのAセクションはノリがよくないから、
    マルチを切ろう。切って貼り付けよう」

    その言葉に、当時のレコーディングエンジニアをしていた方は
    凍りつきました。
    マルチテープを切るというは、
    失敗したら全部パーみたいなことなので、
    責任重大、エンジニアの沽券に関わることになるわけです。

    しかし、そのエンジニアは冷静を装って
    (だって、マルチなんか切れませんといえないものね、
    当時の売れっ子アレンジャーに)
    マルチに鋏(はさみ)をいれていました。
    その手が、かすかに震えていたのを、
    私は覚えています。

    こんなことは、夢のまた夢。
    今なら、簡単にコピーできます。
    切れます。
    失敗したら、UNDOすればいいだけです。

    それをやってのけたシステムが、
    プロツールです。

    最近、わたしがスタジオに行くと、
    アシスタントエンジニアの方が、こういいます。

    「大丈夫ですよ。歌は、全部レコーディングしていますから、
    悪いところがあったら、僕にいってください。コピーして貼り付けますから。
    簡単ですから」

    その言葉、10年前に聞かせてほしかった。
    あのときのエンジニアの指の振るえを、
    君に見せたかった。
    いい時代に生まれたねと。

    次回は、ミックスについて書きましょう。
    プロツールスが入って、それまでのミックスと何が変ったのか、
    参考になることがあると思います。

    上記の写真は、山口百恵さんのベストです。
    萩田さんのアレンジ作品がたくさん入っているので、
    興味のある方は、参考にしてください。本当にすばらしい才能ですよ。

    Posted by hajima @ 12:42 AM

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