• 26 Dec 2008 /  サウンド分析  / 



    実際の作曲の現場で思うのは、
    音楽理論の良い参考書がないかということです。
    今は昔と違って音楽理論書がたくさん出ていますが、
    なかなか実践に即したものがなく、
    参考曲がバッハだったりディーク・エリントンだったりして、
    現実的ではないという印象。

    今のヒット曲を分析したコード理論書を探したのですが、
    実際ないので、結局、金田くんとで編集することに決めました。
    そう決めて1年半。やっと「作曲の王道」ホームスタディーコースが
    印刷所からあがってきました。

    やってみてわかったのは、作家への許諾の難しさでした。
    というのは、今、ヒットチャートを登っている作品を
    「転調」というくくりで分析してみると、
    必要になるのは、まず譜面です。
    多くの場合、音楽出版社とのやり取りの中で、こちらが譜面を作成し、
    それでよいのかのOKを仰ぐという作業が必要になります。
    また、できた譜面を元に解説するのですが、
    その解説が作家の意図と合致していなければならず、
    出版社とのキャッチボールが結構続くわけです。

    こうした作業を100以上の作品でおこなったので、
    1年半かかったのでした。

    私と金田くんにとって、この「作曲の王道」ホームスタディーコースは、
    今の作曲理論をすべてカバーするネタ帳であり、
    このノウハウを知っていれば、今のヒットを生んでいる作家たちのノウハウを
    そのまま解説することになると、自負しています。
    実際、私のスクールではすでにこの本を売り出していますが、
    読んだ生徒さんから、「昔作った作品をリハーモナイズ、つまりはコードを
    この理論書に沿ってつけなおしたい」という要望が多数寄せられています。
    それだけ、あたらしい響きに満ちている
    本だということでしょうか。

    「作曲の王道」ホームスタディーコースは来年年頭より、
    通信販売で、一般の方々も買えるようになりました。
    興味ある方は、是非、チェックしてください。

  • 02 Dec 2008 /  サウンド分析  / 



    MTVでまた気になるアーティストを発見しました。
    ジャスミン・サリバン。いいです。
    ハスキーボイスが何ともよくて、
    トラックも最近聞きなれない感じでした。

    どうして聞きなれないかというと、
    マイナースケールでできているからです。

    どういうわけか、日本のトラックにはマイナースケールのものは
    昔から多かったのですが、アメリカやヨーロッパのものは、
    なかなかマイナースケールだけで書かれた曲がない。

    アメリカの理論書を見ていつも思うのは、
    スケールの勉強をメジャーからはじめている
    ところです。

    これは、ブルースとかカントリー、ゴスペルなど、
    アメリカンミュージックはどれもメジャー主体であったことに
    起因しているかもしれません。

    もしかしたら、メジャースケールはたったひとつだけだけれど、
    マイナースケールは3つもあって、
    覚えるのに複雑だからかもしれませんね。

    ヒットチャートを見ても、マイナーからはじまる音楽は最近、
    なかったように記憶しています。
    しかし、こうして彼女の「BUST YOUR WINDOWS」を聞くと、
    「やっぱり、マイナーって、いいじゃん」
    と叫びたくなるような魅力があります。

    コードはAmとDmとE7の3つきりでできたこのトラックは、
    2拍4拍のスネアーとフィンガーチップでリズムを刻みます。

    この3つのコードは昔から日本人の大好きなコードの流れで、
    例えば、宇多田ヒカルさんのお母さんの藤圭子さんのヒット曲、
    「圭子の夢は夜ひらく」なんて曲はこの3つのコードだけで
    作られています。そういえば、井上陽水さんの
    「リバーサイド・ホテル」もこのコードの流れでした。

    調べてみると、フィラデルフィア出身の女性R&Bシンガーで、21歳。
    ハスキーな声と歌唱力と卓越したソング・ライティング・センスで
    制作されたデビュー・アルバム『Fearless』の日本盤が、
    12月24日にリリースされるということでした。

    『Fearless』は今年9月にアメリカでリリースされ、
    BillboardのR&Bチャート1位、総合チャート6位を獲得しています。
    作詞作曲の大半を彼女自身が手がけているとのこと。

    さらにプロデュースはジャスミンを見出したR&B界の
    〈女帝〉ことミッシー・エリオット。
    ニーヨをトップアーティストに押し上げたスターゲイト、
    フージーズやナズとのコンビで知られるサラーム・レミなど、
    現在のR&Bシーンを代表する面々がバックアップをつとめています。
    興味のある方は、ぜひ聞いてみてください。

    宿題:AmとDmとE7の3コードで曲を作ってみよう。

  • 24 Nov 2008 /  サウンド分析  / 




    MTVを見ていて、Didoという女性の「Don’t Believe in Love」を聞いた。
    いいじゃないですか。
    声が透明でこちらに迫ってくる。
    力が入っているわけじゃないので、伝わってくる感じ。

    早速Amazonにて購入。
    そうしたら出たばかりのアルバムということが判明。
    Didoとはどう読むのでしょう。
    「ディド」?
    「ディード」?
    importで買ったので詳しいところがわかりません。

    Amazonから送られてきたCDに映っていたのは、
    きれいな金髪のおねえさんでした。
    アーティストっぽい匂いがすごくします。
    最近、アーティストは美人すぎないほうがいいですね。
    その人と対峙したときに、綺麗すぎると綺麗なことに気を取られて、
    詩がいいとか声がいいとか音楽にいきつくまでに時間がかかります。
    ビジュアルの魅力とはそれだけ大きいということですね。

    アーティストっぽいビジュアルとはどういうところでしょうか。
    まず、利発そうに見えること。
    そして観察力がありそうに、瞳が輝いていることでしょうかね。
    自分以外に興味があるということが、アーティストのとても大きな要素でしょう。
    どれほど利発でも自分のことしか興味がない人は、
    自分のことを語りつくしてしまうと、詩が書けなくなります。

    「Don’t Believe in Love」に針を落とします。
    いいですね。
    これがよいのは、introのベースとドラムのリフ。
    音楽知っている人ですね。
    そのあとに出てくるボーカルの透明感。
    ここでベースは演奏しなくなります。
    つまりDidoは最初の数小節、ドラムだけで歌うのです。
    そのあと、ベースとギターとキーボードが入ってきて、
    コード感を感じることになります。

    2choに入って、パッドのシンセが入って音に厚みが加わりますが、
    そのあとすぐに、stringsが加わり、音像がいっぱいになります。

    アルバム全体に感じたのは、いつも同じ楽器で鳴っていないことです。
    ドラムだけで歌うこともあれば、ギター一本で歌うこともあります。
    通常なら音像をはっきりさせるためにドラムとベース、
    ギターにパッドあたりは常に鳴っていて、
    それに歌がからむのが常套手段ですが、Didoはそうなっていない。
    stringsのアレンジはプロデューサーのjon brionが書いているとクレジットされていますが、
    これは本物のstringsでしょうか。打ち込みでもこれくらいなら再現可能でしょう。
    でもそうがいいのです。書きすぎていないからDidoの歌が映えます。

    クレジットを見るとdrumもbassも人が弾いていると書かれていますが、
    聞いた印象は打ち込みのかちっとした感じです。
    聞いて人が弾いていると感じたのはGtくらいなもので、
    あとは人工的なイメージですね。
    どの楽器もデザインされていて、月並みに終わっていないところがいいですね。

    internetで検索してみたら、Didoは「ダイド」と読むとか。
    今年37歳のロンドン生まれ。
    UKやヨーロッパやUSではすでにスターですね。
    あのエミネムが彼女の作品をサンプリングしてブレイクしたと書かれていました。
    今年聞いたアルバムの中で、最高の一枚です。
    どうぞ、興味のある方、聞いてみてください。しびれますよ。

  • 14 Nov 2008 /  サウンド分析  / 

    hanah/My Girl


    Mtvを見ていると、J-pop、がんばっている人、いますよね。
    もちろんB’zや浜あゆ、椎名林檎にジャニーズという
    ヒットメーカーたちがかんばっているのは当然としても、
    これから出てくる人たちを見て、それまでに聴いたことがないような
    サウンドや歌声を発見して、ちょっと、うれしくなってしまう、
    今日このごろです。

    今、J-popは売れないといわれていますが、
    経済的にきびしい環境の中、あたらしい才能の芽は
    確かに息づいてきているのですね。

    今日紹介するのは、hanahというボーカリストの歌う、「MyGirl」です。
    ギターを弾きながら歌うボーカルに惹かれました。
    何というか、今まであまり聴いたことのないサウンドも魅力です。
    とても暖かい日差しの中でhanahさんのひとりごとを
    聴いているような気分になる音楽です。

    編成はループのドラムにベース。
    フェンダーのローズ。これがいい音をしています。
    ストリングスのセクションは本物をシュミレートしたもの
    というよりは、ソリーナのような70年代のシンセの感じでしょうか。
    同時に生ピアノと生ギターが鳴っています。
    コーラスは一度コーラスしたものを
    サンプリングしているのではないでしょうか。

    サウンドの中核をドラムとベースとフェンダーとボーカルが担っていて、
    ソリーナやコーラスはいい感じで絡んでくるという
    王道の作りです。

    この時点でhanahさんのプロダクションについて
    何も資料がないのでわかっていないところがありますが、
    クラブテイストのJ-popというジャンルで、
    マニアックな音楽をよく知っている人が
    プロデュースしている感じがします。

    今日、ここに取り上げたのは、
    コードの流れに興味を持ったからです。
    コードはジャズでいうツーファイブの流れで作られています。



    Fm7→Bb7→Gm7→C7という流れは
    2.5.3.6というジャズでの代表的な進行ですが、
    ポップスに使われるのはそうはありません。

    キーがEbの曲でいきなり歌頭がFmに行くのは
    勇気がいるからですが、この流れはあの名曲
    「ふたりでお茶を」とか、ビートルズの
    「and I love her」などの冒頭のコード進行なので、
    一度はまるとやみつきになる
    コード進行です。
    興味のある方、このコードの流れで
    一曲つくってみたらいかがでしょうか。

    ちなみに、hanahさんはこのくりかえしで「MyGirl」を作曲しています。
    同じコードの繰り返しで各セクションを作ってゆくのは
    クラブっぽい作品制作の方法です。
    いい感じですので、ぜひ聴いてみてください。

  • 03 Nov 2008 /  サウンド分析  / 


    MTVから流れてきた坂詰美紗子の「恋の誕生日」を聞いて、
    世の中、変わったなと思いました。

    何が変わったって、J-popの表現では、
    R&BといえばソウルミュージックだってHiphopだって
    いっしょくたになって、アメリカでその時流行っているサウンドを
    パクッて制作されるというのがヒットのコツだったりするのですが、
    坂詰さんの音楽は60年代デトロイト、
    それこそトム・ベルのプロデュースしたスタイリスティックスの
    サウンドを進化させながら現代に蘇らせたという感じで、
    サウンドに主張があります。

    例えばEXILEだったらその時その時のヒット性の高いところにグループのサウンドを
    もってゆく、良い意味でエンターテイメント主体のスタイルをとっていますが、
    坂詰さんは私はこのスタイルと、専門化しているように感じました。

    彼女のもっているエレピは60年代ディスコサウンドを
    代表するような名器で、それで演奏し作曲しているのを見るにつけ、
    さまざまな音楽をやってきて、やっとここに自分のサウンドがたどり着いた、
    みたいな感じを受けるのです。

    坂詰さんの「恋の誕生日」を聞いたことのない人は
    ぜひ聞いてみてください。
    弦(ヴァイオリン、ビオラ、チェロというストリングスセクションのことです。
    通常、1980年代、スタジオでストリングスといえば、
    こうした弦楽器を操るスタジオミュージシャンが16人集まって、
    演奏してくれたものです)とブラスセクション
    (これもトランペット、トロンボーン、サックスの編成を言います)
    が入っていて、豪華ですよね。

    トム・ベルはお金にいとめをつけずに、
    こうした豪華なサウンドをプロデュースして成功しました。
    そのトム・ベルサウンドが今を感じさせるサウンドに蘇っています。
    これって、そんじょそこらのアレンジャーじゃできないサウンドですよね。
    専門的な知識がある人じゃないとできない音になっています。

    坂詰さんの作品は詩も曲もとてもよくできていて、
    良い詩がなくなったといわれている2000年代のJ-POP作品の中でも
    「上手い」作家のひとりだと思います。

    作品もいいし、サウンドも構築されている。
    これじゃ、格好ばかりつけて歌っている
    偽シンガーソングライターの立場なしです。

    この「恋の誕生日」ですが、
    もうひとつ、素晴らしいところがあります。
    それは、イントロです。
    ほんの短いイントロですが、このジャジャジャジャジャーンという
    5つの音で決まりって、感じでしょうか。
    彼女の描きたい世界はこの5つの音で明確に聞く人に提示している
    すぐれたイントロです。
    このイントロ、私の2008年のイントロ大賞ということになるでしょう。